長距離において、厚底シューズの人気が上昇するとともに、ベアフットシューズやミニマリストシューズは、一時より目立たない存在になりました。
ほぼベアフットシューズしか履かない私でも厚底カーボンは素直にすごいと思いますし、レースにおける厚底カーボンシューズの優位性は科学的にも確かです。
では、厚底カーボンシューズはベアフットシューズより優れているのか?と聞かれれば、必ずしもそうではなく、条件による使い分けが必要です。
例えば、厚底カーボンシューズのデメリットとして、使用を続けると、足裏やふくらはぎの筋・腱の能力が衰えるリスクがあることが明らかになっています。
厚底カーボンシューズとベアフットシューズ、条件ごとに比較をしていきましょう。
*以下、ここでは厚底はカーボンプレートを使用した高反発シューズを指します。カーボンの無い反発を抑えた厚底シューズは利用価値が低いためです(詳しくは「厚底シューズの選び方-おすすめできない厚底とは?」)。
練習はベアフットシューズがおすすめ
普段の練習ではベアフットシューズを使いましょう。
日ごろから厚底シューズで練習を続けると
- 足裏・ふくらはぎなどを鍛えられない
- 正しい接地が崩れるリスク
という2つの問題があります。
足裏・ふくらはぎなどを鍛えられない

厚底カーボンシューズは足裏とふくらはぎの筋・腱があまり使われません。
2019年のIain Haunter氏の研究(*1)では厚底シューズではふくらはぎの活動量が4%抑えられることが報告されています。2020年の順天堂大学スポーツ健康科学部の研究(*2)でも、ふくらはぎの活動量が5%ほど抑えられることが報告されました。
筋の活動量が抑えられるため、疲れにくく長い距離を走ることができるわけですが、練習で活動量を抑えてしまえば筋と腱の能力は低下していきます。
厚底シューズを履き続けたら次第にスピードが出なくなったという経験談はよくある話で、検索するとすぐに見つかります。これは足裏・ふくらはぎの筋や腱が衰えていくためです。
練習で体を甘やかしていては意味がありません。ベアフットシューズでしっかり鍛えておきましょう。
ただ、厚底シューズの感覚もつかんでおく必要はあるので、厚底シューズでの練習も定期的に行いましょう。感覚をつかめばよいので、長い距離を走る必要はありません。
また、厚底シューズは寿命が短いです。例えば、ヴェイパーフライはカーボンの劣化が起こるため、走行可能距離は400kmで、通常のシューズの5~7割程度しかありません。
この点からも、練習での使用距離は抑えて、レースまで大切にとっておきましょう。
正しい接地が崩れるリスク

接地面が柔らかいほど、人は強く地面に接地するようになることがわかっています。(詳しくは「クッションで足の怪我は減らない-研究では裸足有利」で。) クッションのあるシューズを使うほど、柔らかな接地の技術はおろそかになっていくリスクがあるのです。
厚底シューズを履いても接地が下手では意味がありません。
ベアフットシューズや裸足の場合、接地が悪いと衝撃を強く感じますし、足裏の摩擦で足運びの良し悪しもすぐにわかります。
衝撃の少ない接地・摩擦の少ない足運び、そこに厚底のサポートが加わることで初めて疲れにくい走りが実現できます。
厚底シューズは道具であって、いかに上手く使いこなすかはランナー次第です。
10kmを超えるロードレースなら厚底

トラックでは2025年以降、靴底は厚さ20mm以下と規定されました。そのため、厚底シューズ使えるのは、ロードレースのみです。
靴底が柔らかく、バランスをとるのが難しいので下りは練習が必要ですが、使いこなせるならアップダウンのある道でも大丈夫です。
凹凸のある道では安定性が保てないので、舗装されていない山道やトレイルランでは使えません。機能を発揮できないだけでなく、不安定で危ないので使うべきではありません。
砂利道も折角の反発を生かしきれないのでおすすめはしません。
厚底シューズがが能力を発揮できるのは、舗装された道のロードレースのみとなります。
速いけど使えるのは舗装された路面だけ、車で言うならF1のようなシューズですね。
トラックレースでも厚底が使えていた2020年頃までは、10kmのトラックレースで、厚底の選手とスパイクの選手が混在していました。
10km程度から、厚底の恩恵が感じられる距離と考えてよいでしょう。
参考文献
*2. 秦啓一郎, カーボンプレートを内蔵した厚底マラソンシューズが長距離選手の脚スプリングに与える影響; 日本トレーニング科学会大会プログラム・抄録集 33rd, pages 36, 2020.
